「今日はクリスマスですよー」て
たえさんが
一生懸命、昨日からつくりあげてきたご馳走とか、
アルコールなしのシャンパンとか
机に並べつづけている
チンネンさんは黙ってそれを手伝っている
チンネンさんの父親だったら
「うちは寺だ、
クリスチャンじゃない」と
怒っているところかもしれない

「チンネンさん、ほらこれきてー」
たえさんが
焦りながらてこてこ走ってくる
チンネンさんは思わず苦笑いを浮かべる

真っ赤な衣装を
服の上から着せられながら
「いいですかー
これから子供たち来ますから―
チンネンさんは
あとからゆっくりはいってきて
メリークリスマス、ふおふおふおふおっていってー
いい子にはプレゼントじゃよーっていうんですよー」
「ぼくがですか?」
いえるかなぁ、と
チンネンさんは少し困る

たえさんは焦りすぎているのか
顔が真っ赤だ
午後までに、ケーキと
スペシャルイモのにっころがしも
(うちは寺だからチキンのかわりらしい)
そう、懸命に、数えている
ふたりで飾り付けた寺の中は
金や銀のかざりでぴかぴかだ

モミの木がわりの、庭の松の木も
町でみかけたふわふわした光る飾りを
きずつけないように、丁寧にかけられている
下には椅子と机がおかれ
子供たちの願いを描くための短冊と
筆が用意してある
あきらかに七夕と混じっている

「キリストさまのこと、なんにも
知らないのになぁ」
空に向かってチンネンさんは
すこしだけ、すいません、と
頭を下げる
お誕生日、おめでとうございます
すこしあやからさせてもらいます

できれば
よい子に、よいひとに
よいことが
ありますように

チンネンさーン、と
遠くから呼ぶ声がする
ついで、ぎんごん、と、チャイムをならす音
子供たちのプレゼントー、これでいいのかねぇー!
お手伝いに来ているゆきさんとおばさん方だ
はーい、と
返事をしながら
また空を見上げる

なんとなく
神様も仏さまも
笑っている気がする
……ふぉふぉふぉ、なんて
いえるかなぁ…、目じりに笑みを浮かばせて
チンネンさんはとてとて歩き出す

朝から寒い冬の空は
それでも真っ青に、晴れていた