2017-10-10

遠い森の奥さま



遠い遠い森の中の城のような町があって
木々は青く白く
温かで湿り気をおびていた
風は木々の香りとともに
どこかの海の香りがした

たまに、そこでお世話になった
奥様が、私のところに
いらっしゃる

大きな方で、尻尾をもたれる
白い美しい背毛があり
尾長鳥のような尻尾をもたれる

奥様とのことは
なんとなく覚えておりますが
そこがなんで、
どこだったのかは
わかりません

私は人間で、奥様は神官をされていて
ほかの方々も奥様のようにおおきかった
ちょうど人間にとって
ハムスターのようなサイズで
私は、奥様の掌のなかでいつくしまれ
育てられた

私の夫としてもたらされた方は
その神殿の奥で
おなじように慈しまれ
育まれた男の方だった

奥様は神官のなかでも
位の高い方のようで
私と、旦那様を
神殿の奥の部屋にはこんで
いつも慈しみをもって
接してくださった

その地にはよく海から雷があり
海から嵐がたちのぼった

そうすると
その地の方々は
その神殿の奥につどい
しずかに、しずかに
嵐がすぎるのを待たれた

……

月に一度ほどあるバザーは盛況で
その地ではないところにも
国があるのをうかがい知れた

きれいな「ヒト」ですね

バザーを散歩する奥様について
ふたりで、その幅広い肩にのり
キョロキョロしていると
よくそういわれた

ペットのようだったけれど
ペットではなかった
もっとなにか、不思議な待遇
名誉ある命として
対応されていた

……

奥様は、よく
寝込まれていた
神が、おりるのですよ、と
ほかの神官に教えられた
私はちいさいながらも
奥様のせなかを
懸命にさすった

……

私のほうが
夫よりも
奥様よりも
先に天に召された

奥様は大涙をながして
声もなく、ふるえ
こらえていた

旦那様は
ぼくも、すぐにいくだろうから
あんしんしててね、といわれた
私は複雑な気持ちで旦那様の手を握り
私をつつむようにされた
奥様の掌にお礼のキスをした

あの地がそのあと
やがて滅んだのを
なにか、しっている