温かな黒いみずのなかにいて
目をつむれば
なにかはらはらとした
ちかちかとした
ひかりが見えた

もうすぐですからね
そう言われたから
めをひらいたら
ましろい、毛のある
亀に乗っていた

不思議な夢を見た
そういったら
そうですか
よぅございましたね
と、いわれ
ただ、海水なのか
なみだなのか
わからない
あたたかな
やわやわとしたものが
ほほに流れる

亀は無言で
およぎつづけ
光のような
ちかちかとした
またたきが
傍をすぎさる

くらげにも
魚にも
思えた

亀がはやいからか
みずは、うしろにうしろに
たうたうと
流れ続ける

ましろい、月のような
ゆらゆらとした
きょだいな
ひかりが見えた

もうすぐですからね
亀はまた言う

あした
生まれたら
きょうのことを
覚えているだろうか
ふ、と
不思議なことを思う

昔、できたことが
できなくなって
戸惑い
だから進むしか
ないのだろうか

幸せになればいい
わけもわからず
満ちているような
さびしさで
思う

きっと、人のさびしさは
ずっとずっと
自分にしか
なれないことなんだろう

亀はもうすぐですからね、
ただ、そう言うばかりで
わたしは何がもうすぐかも
分からない

温かなみずは
深くまですきとおり

金色とももいろ
下のほうは
紫で
赤いゆらゆらした中に
金のひかりが
満ちている

もうすぐですからね
亀が繰り返す
何かは
分からなかったけれど
もうすぐなら
安心なんだと
おもえた

わずか
そのひかりの中から
瞬きながらも
点滅するような
歌が、流れてきた
2011-12-20 22:52:01