ゆかなぎの家のお風呂で
なめくじが溺死していました

珍しい……

知らずに沸かすところでした
湯船の蓋をあけたら
透明な水のなか
底のほうに
溺死していました

すこし肌色の
奇妙な横長の、物体
湯船の真ん中でピクリともしません
なんだこれは、と
まじまじとみつめて
なめくじだと気がついて
ゆかなぎは絶句しました
どうも死んでいるらしい
なめくじも「溺死」するのだと
大変おどろいたのです

ナメクジは幽霊のかわりだから
厄よけてくれたのだね
慌ててとりさんに報告すると
落ち着き払って、そう言うのです
思わずゆかなぎは返しました
……うそぉ

霊の障りがおおいとき
わいてでるんだよ
幽霊のかわりに出て
まもってくれんだよ

うそだよぉ……

幽霊のかわりだから
塩をかけるととけるんだよ

んふんふ、と
もっともらしく
胡散臭いことをいいます

うそばっかだ、と
笑いながら
湯船をみますと
わずかに、
溶けながら這ったあとがあります

そういえば、
昨夜はとりさんと
怪奇実話ホラー特集を
テレビで二時間も
みいっていたのでした
そのせいでしょうか

とても怖かったな、と
ゆかなぎは思い出します
ひとりでは絶対にみない
こわいものも
とりさんがいると
平気なのです

お風呂で溺死して
なんの幽霊だったのかな……