守り神

だぶーんだぶーんと
海がなっている
暗いくらい海
ま明るい月が
海のすきまを光らせている

目の前の人は誰だろう
暗くてよく見えない
おんなのようだ
手ぬぐいを、波しぶきよけなのか
頭からかぶっている

ーーひとにはひとの
いぬにはいぬの
子には子の
守り神があると
もうしられます

ざーーざざ
ざぷーーん

波がいったりきたりしている
女はなにか
琵琶のような
ちいさなものをもって
ビィイン、と
ならしはじめる

とおくから
歌声がする

ーーあれは人魚のこえですね

男が言う
いつの間にいたのか
いや、はなからいたのか
私の後ろに座っている

ーー人魚には人魚の
くじらにはくじらの
物の怪には物の怪の
守り神がありんともうしゃす

ふしぎなナマリで女がいう
歌の節のようだ

ーー宇宙人には
宇宙人の
魔物には
魔物の
人間には
人間の
守り神がありんともうしゃす

ざーーざざ
ざーーざざ

ーー種族
対立する種族は
敵となる種族を
喰らうともうしゃす
守り神は
護るものをまもられる

おんなの琵琶が
ビィィン、と
鳴り響いた

ーー人間を
喰いものにする「種族」が
ありんして
人間の神々は、
子をまもる母父のように
ソレを
駆逐していくと

ーーけだものが
すきのある生物を狙うように
命のみなもとの
あたたかな
ものを
喰らうというね

ビィーーん
ビィーーん
琵琶がなる

ざーーざざ
ざーーざざ
海がなる

ーーひとは
護られておりまして
だれも 見捨てられることはなく
ひと、ならば

ビィーーん

そうして
女が、うたいはじめる
そうして
おくれるように
男が
うたいはじめる

琵琶がなる
海に響いて消えていく
2017-10-17 16:30:33