赤い羽根

木々があかく染まっているから
なんだとおもったら
赤い羽根がたくさんついている

おお、なにか
鳥が羽根おとしでもしたかと
よく目を凝らしてみたら
真ん丸い目んたまが
ところどころにあって
ギラギラひかりながら
私を見下ろしていた

1羽が肩まで飛んでくる
ふくろうだ
顔を、ヨコと縦に動かして
一声鳴いた

……

足が痛かったので
苔むした岩に座ると
突然目の前に沼があらわれた

そこに手のひらを上に向けて
がひ、がひ、と
泡を吹いているヒトが
横たわっている

いや、ひとに見えるだけで
あれはビニール袋のようだ

……

ほう、と
ふくろうがなく

お空のものは
網を仕掛けた
汚らしいものは
罠を仕掛けた

お空のものは
人を救った
汚らしいもののは
罠だった

ほう、と
ふくろうがなく

……

沼は藍色で
上の方の
金色に染まり上がる空を写し
ひかりながら
たぷん、たぷん、と
泥水をゆらしている

ガバ、ガビ、と
ビニール袋が
ゆれて、しずんでいく

泡がまわりにたちあがる

……

悪意あるものを
許せというのか
悪意あるものと
おなじだというのか
悪意あるものは
おまえのセイというのか
かかわりは
おまえのセイというのか

いつも
何を庇っている

ほう、と
ふくろうが鳴いて
ひとつ羽ばたき
沼をこえる

……

ユルセ、というのか
あなたが悪をつくっている、というのか
すべてあなたのせい、というのか

そう思わないのは
わけていくものたち
それを好んでしているというのか

それにはまるなというのか

おなじとみなせ、というのか

アレの悪は
浴びたものの
心持ちのセイだというのか

いつも
なにを
庇っている


ほう、ほう

……

沼の中に赤い羽根が落ち来る


……

ふと見上げると
ビニール袋の上に
老婆がいた

杖をついて
悲しい目で
私を見ている

赤い羽根が
上から、ふりおちる
木々の隙間の光が
老婆と赤を一際光らせる

アレをかばうための意見を
いろんな後ろ盾を
つけいいながら
流すのは、どうかと
思っていた

老婆がいう
聞き取りにくい
それでも
なにをいっているのか
わかりやすい声で


朽ち果てていく
アレを見ていたんですよ

こんなふうに
朽ち果てていく

ビニール袋を老婆が杖で指す
ごぼり、ごぼり
ビニール袋はしずんでいく

くさっていくんだと、
なんとなく思う



あれは
悪意のかたまり
怒られないために
責任を追求されないために
駆逐されないために

悪を、ひとのせいにして
ひとを
悪のかたまりと
同じものにしようとしていた


そうしたことを
流していましたよ

……

バタバタ音がする
たくさんの鳥が
急にいっせいに羽ばたきはじめる

嵐のような
羽ばたき
風が強く
下にふきつける

思わず目を閉じて
あけると
沼いちめんに
びっしりと
赤い羽根が
おちていた

ほう、と
とおくで
鳥が鳴いた
(シリーズ:悪人)
2017-10-17 18:15:25