空の蟻

♪~♪~ いつも思っていたんだ 砂山で作った城 鳥の鳴き声 夕暮れ 公園のベンチ ブランコ ♪~♪~ いつも思っていたんだ 手に入れた何もかも 崩れ落ちる時 わかっていた ♪~♪~ いつも 思っていたんだ 手に入れたとたん 崩壊を感じた

恐怖がいちばん つよいんだ ♪~♪~ おびえが ♪~♪~ 次に欲望が ♪~♪~ よくぼうが いちばん つよいんだ ♪~♪~

♪~♪~ にぎりしめた ぶらんこの 鎖 ♪~♪~ いつも そう ♪~♪~ いつも おびえは 怒り さびしさは 狂気 欲望は 欠乏を 招きいれた

♪~♪~ 私はどこへ向かう あなたはどこへ向かう 夕暮れはずっと続いている ♪~♪~ 明日はどこにある ♪~♪~ おびえは怒りを さびしさが狂気を 欲望が焦燥を つれてくる ♪~♪~ きみはどこへむかう

♪~♪~ 明日は見えているの 今日の足場も見えていないのに 明日はどこにあるの 今日も手にいしていない ♪~♪~ いつもわかっていた ♪~♪~ 鬼など居ない ♪~♪~ 公園のブランコ ♪~♪~ ゆれる夕暮れ 明日は見えているの

空の蟻のお話を はじめるよ ♪~♪~

坊は山のふもとの池のそばに住んでいる、髪がぼさぼさにはえて いつも鼻水をたらしているような キカンボウだった。

ある日坊が歩いていると、小さな女の子が地面を見てじっとしていた。坊はそういうやつなので、ふと興味がわいて女の子に聞いた 「おう、 何を見ている」

女の子は無言でいちど坊をみたあと、また地面に顔を向けた。真昼間だった。太陽はまんなかにまっすぐあがって 明るい明るいぎんぎらぎんの光を 坊たちになげかけていた。紫の濃い影。

坊がのぞきこんだら、女の子は蟻を見ていた。黒いありが、1ひき、2ひき、3ひき つらなって 歩いていた。

坊は女の子の顔を覗き込んだら、彼女のめはまっくらで 坊はどうしてこの子はこんなに暗く下を見ているんだろう、と思った。「おい、蟻の隊列なんかみたって 面白くないぜ」

そういったら女の子は坊をみて、もう一度無言で、うるさそうに顔を地面に向けた。なんにも見ていない目で。かぜがビュウビュウふいていた。木々がざわざわきしみ、それなのに、太陽がぎらぎらでとても暑かった。

坊はふと思いついて、ポケットから黄色のパイン味の飴玉をとりだして、「もったいないかな」とおもったけれど、蟻の隊列の前にそれをおいた。

太陽がぎらぎらで、ありはすぐにうれしそうに飴にたかった。金色の飴はとけはじめ、すこしずつ、蟻が運んでいく。

女の子が、ふと坊をみあげた。さっきまで何も見ていなかったのに。今はちゃんと坊を見ている。でも何も言わなかった。

それで、坊はちょっと照れたように「地面じゃないところにもありはいるんだぜ」っていった。女の子は「ほんとうに?」と 驚いたように声を出した。ほんとうに?

うそだったので、坊はこまった。こんなにほんとに?なんていわれるとは思わなかったんだ。

でも、女の子がこたえてくれたのが うれしかったので、坊は、うん、といった。うん、えーっと。

「あのなぁ、えっとなぁ」

女の子はどきどきした顔で坊をみていた。坊は困って空を見上げた。風はビュウビュウと、雲をはこび、地面に雲の影がおちて、何度も何度も日の光がさしたりかげったりした。

「うん、あのなぁ、目、とじてな、30秒ぐらい目、とじてな」坊はしばらく考えてからものものしげに言った。

「えっと、もう良いかな、っておもったら 目、あけるんだぜ あの、それで見えるよ 空にいるんだ 空の蟻なんだ」

女の子と坊は太陽の下、寝転がって目を閉じた。30秒ぐらい。 目を開けたら女の子はおどろいたように声を上げたよ。

「まわりのいろがちがう」

「うん、それな、蟻のいろなんだ」「ええ?」「30秒ぐらい目とじてあけると、蟻が……」ちょっとわからなくなって黙った。

「蟻が、えーと 目が、蟻の目になっちゃうんだ!」そしたら女の子はぶはっと吹いて うそお といった

「ほんとだよ」

それで、坊と女の子は笑いあった。 風はビュウビュウとふいていたし 太陽はぎらぎら 木々はごうごうときしんでいた。

いつだって現実は変わらない。

心も変わらない。

空の蟻のおはなし おしまい。 (※日のあたる景色の中で目を閉じ、しばらくしてからあけると景色の色が違います。※要注意※太陽は見ちゃだめだよ)
2011-10-01 21:26:35