カメラ

きいろい砂漠のなかで
らくだにのって
それを案内するひとが
ぽてり、ぽてりと
はなすのは

ピン呆けカメラで
あなたをとったら
ぼやけてみえて
かなしかった
だの 不思議な話ばかりで

その金色の
薄い髪が
さらさらゆれるのを
眺めていた

うすいあおい空に
金のつきがぺりっとのぼって
あかいゆらゆらした空気が
地面の底から立ち上る

砂漠の砂はさらさらで
ところどころのサボテンが
赤い花をみごとに咲かせ
どこからか、
鳥さえとんでくる

しろいとり
くろいとり
いろいろな とり

森が、近いからだろう

のうはね
さっかくをおこすんです
ごにんもするんです

まずね
いちばんさきに
じぶんの いまの
与えられた
理不尽の
りゆうを
ひとのせいにします

 理不尽と 矛盾が
 この世界の ほんとうの姿
 それには 理由がない

 だけど のうは
 納得しない

 人を好きになる 理由
 人を嫌いになる 理由
 いきることさえ
 理不尽で 矛盾ばかり
 だのに
 のうは 納得したがる

これが、 始まり

 ―― ちえの、嘘

 ―― 知恵のみを食べたとき
 わたしたちは 嘘を知った
 ひとへの 嘘
 そんなものより
 ごく ふかい
 自分へ うそをつくこと
 おぼえてしまった

それでもそれを
嘘だろうと、
問い詰めていくと
つぎは
これが犯人です
と、ちがう自分を
つれてくる
かならず つれてくる

だから、また
嘘だとといつめ
ぞくぞくいいます

 わたしののうは
 いつも 間違えばかり
 ばかばかしい 理由ばかり
 わたしののうは
 知ろうとする

 わたしのこころは
 わたしを
 わかっている

 なんの理由もない わたしを
 わかっている

ほんとの真心は
まるで
ぬめぬめした皮をかぶる
ぶよぶよした丸いもので
さわろうと
すればするほど
身をかわす

いっしょうけんめい
皮にきずをつけて
むいていくと
赤い柘榴のみのような
わたしがうつる

あなたのうそを
見抜きなさい

 みずからの
  ほんねさえ
 みえないものが
 だれの
  おもいを
 みぬけます
 だれの
  すがたが
 わかります
 
 みたいものを
 みたいから
 そのめで みて
 それが すがた
 わかっていた と
 わらうのが
 わたしたち
 にんげんです

 わたしたちは
 ひとりひとり
 ぴんぼけ カメラ

 みたいなら
 じぶんを
 ぴんと はりなさい

あなたは
空を見上げた
わたしは
らくだの上で
つられて
空を、みあげた

3つの流れ星が
すう、っと
落ちてきた

 私がかんざしにしていた
 黄色の花を差し出せば
 あなたは笑って受け取る

すきなものを
たくさん みつけなさい
不満の中
きらいなものを
たくさん みつけて
慶べば 不満は
消えない

ひとをみれば
みるほどに
あなたの不満は
色濃く
ふかまり
消えやしない

 ひとは 慶びを
 しるために うまれる

 みずからの力で
 世界に つくせる喜びを
 じぶんが なにものかを
 わかるために

好きなものを
たくさん
みつけなさい

 どうせ 嫌なことぐらい
 なんべんだって
 おとずれる

 だから

 すきと たのしいを

 たくさん たくさん たくさん
 もっておいで

わたしは
ほほえんだ
とても
うれしかった

 不遇と理不尽の中
 手に出来る 愉悦とは違う
 真心の慶びが
 あなた自身への おくりもの

 けっして 忘れてはならない
 それは あなたが
 見つけ
 あなたが
 抱きしめるのだから

うん、と
いった
2011-12-19 13:47:25