孔雀

むぎばたけが
どこまでも広がっている
その真ん中に
わたしは、
ぼつっと
たちすくんでいる

そばには
だれもいなくて
ただ、風だけが
みょんみょんと
すぎさり
次第に、ほほが
冷たくなっていくのを
感じていた

あかい あかい 夕日が
きんいろの地平線にとけながら
ゆっくり
沈んでいる

胸の痛みがひどいもので
まぎらわすよりはと思い
それで、
抱きかかえていたら
あかい布を着た人が
しゃあんしゃあんと
金色の鈴を鳴らしながら
そばに 立ち止まり
私を見ている

何か言うのかと思ったら
なにも、いわない

どなたですか
そう思ったのだけど
何も言わない
その人のまなざしが
ただ、美しくて
私も
なんにも
いえなかった

どうして も
なぜ も
くちに だせず
めのまえに
ごろっところがっている

 すべて

理由、あれと思えば
理由はあって
ないと思えば
理由など ない

隣に
いらしてくださるなら
それでいいと
思い わらえてしまった


―― ゆきが ふりはじめました

―― そうですね


―― ちいさいころ
 となりにいた 母の手をみて
 あれていたのが
 くるしかった


―― そう


―― 守りたいと思う人が いるだけで
 しあわせなんですね


―― ええ


―― うれしいです

見上げたら
きれいな紫色の空から
ちいさな、光が
たくさん
たくさん
おちはじめ

なきそうだった


―― だれもが しあわせを あじわえばいい

 おかしいですね

 いま たくさん

 なにをしていても
 なにがあっても

 たくさんの 縁はあり
 たくさんの ものはあるのに

 しあわせが
 あじわえないまま
 すごしている

―― 不幸よりも 不遇で
 満たないまま

気がついたら
美しい鳥が
あおじろい夜の下
麦のはたけを
さうさうと
あるいている

なんだろうと
おもったら
それは、
きんいろの
すこし大きめの孔雀で
前を見て
ただ、さうさうと
歩いている

月のしたあたりに
綺麗な星が
ひかり、かがやいて
まぶしいぐらいだった
2011-12-24 17:02:10