かがり火

かがり火が
ばちばちはぜて
赤いひらひらとしたものが
たくさん とんでいた

―― 暖かな夜ですね

そう いわれたから

―― かがり火がもえているから

そう言えば
ふっと
約束を思いだした
約束

―― 言葉は
どうしても
伝わりません
どうしても
伝わりません

約束もまた言葉では
表せなかった

かがり火は
ばちばち いい
やがて燃料もつきて
また 新しい火をつけなければならない

空を見上げれば
ましろな月が
ぽっかり浮かんでいる

かがり火が明るいから
星もみえない

―― 雪女は
約束をして
約束が はたされるか
わざわざ 嫁いだ

嫁ぐために
約束したようなもので
約束がやぶられたら
帰っていった

―― 言葉では
伝わらない
ことが
おおすぎて
うんざりする

おおうい
おおい おおうい と
山のさきから
流れる声 川のむこうから
流れる音

朝がくるようだ
2011-12-05 05:11:45