彼女のなかには
オマエガ・スルベキ、と、アレガ・ホシイ、の
ふたりがいた
スルベキ、は
髪のないおんなのような、がりがりのもので
ホシイ、は
髪の長い、ふとったおとこのようだった
どちらもひどく汚れ果てていた

彼女のそとがわは、まるで
いしきも、感情も、きもちも
スルベキ、と、ホシイ、の
おもちゃだった
だから、嘘まみれだった

彼女はどんどん暴力的になり
ひとにこっそり危害をくわえるようになった

とくに、スルベキ、が
彼女の影響者であるとき
彼女は、他のものを
みずからにわく暴虐欲で
なりふりかまわず
ふりまわした

ほかのものや、尊厳や、いのちを
おもちゃにするかのように
ふりまわした

まるで、
スルベキ、と、ホシイ、が
彼女にはたらいている暴力を
そのまま、真似るかのように



彼女のスルベキ、も、ホシイ、も
よくえんじた
美しいよそおい、優しいよそおい
すばらしいよそおいを
彼女にほどこした

そらぞらしく、気色のわるいえんじを
スルベキ、も、ホシイ、も
よくえんじた

そうしてよくうったえた
たにんがわるいことを、
よく、うったえた



ある日彼女は目覚めると一匹の汚虫になっていた、
たんに自身が汚虫のように感じただけなのだが、
それはぞっとする体感だった

彼女はもう、
彼女がどんなきもちでいるかさえも、
わからなくなっていた
ただ、スルベキ、と、ホシイ、の
影響のしたで、
よそおいをし、暴力をした

彼女のなまえは、もうどこにもない
彼女がふたりの人形となったとき
なまえはきえはてた