朽ち果てる音

百日紅の樹の下で
たちぼうけながら
あの人は
百日紅、猿が滑るとは
ほんとうかしら、と
言われます

……

たくさんの木の実がついた
木々の下を通り抜けると
舌がたくさんに千切れたものがいました
うそをついていたら
千切られましたといわれます

その血を
へびが、ちろりちろりと
舐め飲み干している

……

むこう、むこうのほうが
なにかあかるいですね、というと
あれはね、悪魔だよ
そう、いわれます

自分のだした恥が
あぶらになって
燃えている……

幾億業火
だれもあれに
何もしていない
己の出した恥に
火がついて
燃えはじめただけ

……

もう少し歩きますと
小さな鉄槌を
たくさんに
己に打ち込んだ人がいます
そうして
わらっているのです

あたしは
あたし、は
とくべつに、なれたのに
なぁ

吐く息が
獣臭い……

やがて
毛穴から
そのひとは
まっくろな
汚らしい毛がはえてくる
よだれをだらだらながし
縮こまっていく

つかったら
つかわれるのさ
業だね

上の方で
それを見下ろしていた
真っ黒い何かが
金色の目で
冷めたようにつぶやく

……

あれらの吐く息は
浅く見れば
綺麗ごとを
宝石のように
ぬりたくっていた

あれらはしかし
人を認めることがなかったから

その息にあてられると
ひどく、くらく
削がれるいたみが
やどる

……

赤い赤い道は
だれかの血塗れなのでしょうか
目ばかりが金色の
何か、するどく
おそろしいものが
ひょう、ひゃう、と
鳴いています

あれらは
ひとを認められなんだ
ゆえに
ひとを殺ぐしかなく
まやかしの親身
まやかしのごたく
ひとをくるしめる

ひとをくるしめるから
ひとが
すくわれ
歩もうとするのを
そごうとするから
われらに嗤われるのだ

……

もう少し歩みますと
舐め合うような
おべんちゃらを互い違いに
のたまいながら
つばを飛ばし合う
獣がたくさんおりました

べちゃ、べちゃ
べた、べた

つばが互い、こうごに飛び跳ねる

あれらは
舐め合うしかないだ
認めることができなんだ
受け入れることも
できなんだ
だから、おべんちゃら
ごっこ遊び
舐めあいの誤魔化しで
できている

……

むこうの
むこうの
やまが、あかあかと
燃えるなにかの色を受け
染まり上がっております

あれはね
とてもとても
やかれている

けものはね

彼が私を振り返り見つめました
その目が、やはり
金色

けものはね
あれのちからを
汲んでいた

あれらは
おかしなもので
ナメられたらおわりだから

ナメられないやうに
力も、ちえも、やさしさも
あるように、あるように
よそおうんだ

……

鉄の棒を
つたわるように
あれらが
つかっていたものの
いまの、焼け落ちるコトが
つたわりはじめるだろう

そうして、やがて
あれらも
潰えていく

……

よくみるとね
あれらのまわりは
死んだもの
くさったものばかりだ

そう、かれは
わらう
2017-10-16 19:53:18