花の星
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欲望より
おっかないのが
さみしさと
不安なんだと
そのひとは
いつも いっていた
たまに
気が向いたら
話を聞きにいった
***
木の扉、すこしゆがんだ洞に
なにかしらない
女性の像が彫られている
そのひとが
ほったのかときいたら
違うという
じゃあ、誰かと聞いても
教えてくれない
***
不安にかられたときの
対処法とか
怒りに駆られたときの
こころの落ち着け方とか
よい、お茶の飲み方とか
教えてくれた
それ以外のことは
なにもいわない
たまに、嘘をつかれた
***
アメリカバイソンはね
花をよけて歩くんだ
なんでかって
ほら、花は綺麗だろう
あいつらだって
綺麗なものは
踏みたくないんだよ
***
月のきれいな夜は
月は、機嫌がいいだろう
ほら、ぴかぴかしてさ
あんまり綺麗だから
砂漠の蟻だってうたうんだよ
月明かり
砂は銀色
ところどころのサボテンが
青緑にひかって
プレーリードック(うさぎみたいないきもの)や
すなあらし、ありやごくつぶし
たくさんたくさん
砂のなかからはいでてくる
銀色の砂の上で
彼らは静かに、青い影を落とし
何の争いもしないで
月をみあげて、ただ
みんなで、うたうんだ
***
さいれんない……
***
君の知ってる
あの人が
いっていたよ
君はほんとに
あかごのとき
わんわんわめいて
笑ったり
泣いたり
なに考えているんだか
さっぱりだったって
わかりあえないまま
こまっていたって
だから
口をひらいた時
うれしかった
わかりあえそうで
うれしかった
***
なんねんたって
ふ、と
気がついた
ことばがあるから
少しは
わかりあえていると
思っていたんだ
やっぱり
もしかしたら
なにも
わかりあって
いないのかもね
***
***
わずかに
かさなりながら
ゆずれないところも
わかりあえないところも
たしかに
ありながら
君が幸福なら
うれしくて
不幸なら
かなしい
***
***
月明かりのない夜
その人の家の明かりは消えない
ふりむいても
ふりむいても
いつまでも、消えない
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2012-03-15
14:48:03
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おっかないのが
さみしさと
不安なんだと
そのひとは
いつも いっていた
たまに
気が向いたら
話を聞きにいった
***
木の扉、すこしゆがんだ洞に
なにかしらない
女性の像が彫られている
そのひとが
ほったのかときいたら
違うという
じゃあ、誰かと聞いても
教えてくれない
***
不安にかられたときの
対処法とか
怒りに駆られたときの
こころの落ち着け方とか
よい、お茶の飲み方とか
教えてくれた
それ以外のことは
なにもいわない
たまに、嘘をつかれた
***
アメリカバイソンはね
花をよけて歩くんだ
なんでかって
ほら、花は綺麗だろう
あいつらだって
綺麗なものは
踏みたくないんだよ
***
月のきれいな夜は
月は、機嫌がいいだろう
ほら、ぴかぴかしてさ
あんまり綺麗だから
砂漠の蟻だってうたうんだよ
月明かり
砂は銀色
ところどころのサボテンが
青緑にひかって
プレーリードック(うさぎみたいないきもの)や
すなあらし、ありやごくつぶし
たくさんたくさん
砂のなかからはいでてくる
銀色の砂の上で
彼らは静かに、青い影を落とし
何の争いもしないで
月をみあげて、ただ
みんなで、うたうんだ
***
さいれんない……
***
君の知ってる
あの人が
いっていたよ
君はほんとに
あかごのとき
わんわんわめいて
笑ったり
泣いたり
なに考えているんだか
さっぱりだったって
わかりあえないまま
こまっていたって
だから
口をひらいた時
うれしかった
わかりあえそうで
うれしかった
***
なんねんたって
ふ、と
気がついた
ことばがあるから
少しは
わかりあえていると
思っていたんだ
やっぱり
もしかしたら
なにも
わかりあって
いないのかもね
***
***
わずかに
かさなりながら
ゆずれないところも
わかりあえないところも
たしかに
ありながら
君が幸福なら
うれしくて
不幸なら
かなしい
***
***
月明かりのない夜
その人の家の明かりは消えない
ふりむいても
ふりむいても
いつまでも、消えない