幸福な日々を

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小さな金の竜の子は
モミの木が好きらしい

――いいにおいがするし
てきどに堅いし

日々日々、寒くなり、凍てつくような風が吹くころ
いつもその木はおめかしする
ちかちか光る、すこしピリピリするものがついて
わたをつけて、星をつけて
人形や、へんなものなんかもつけて
おめかしする

人たちが
さまざまなきれいなものを
モミの木に微笑みながら
おめかしさせていくのだ
楽しそうに話しながら

金の竜の子は思う
きっとこの木の誕生日なんだわ

ひとたちはみなにぎやかに
おめかししたモミの木をみあげ、
どことなくあたたかな声をだして
行き交う

みんなモミの木をお祝いしているんだわ

ちいさな竜の子もモミの木に
今年はおいわいの贈り物を用意した
抜け落ちた自身のうろこを固めてでできた光るもの
はずかしいから、モミの枝の陰に
そっとつけた

ほかの人がつけるものみたいに
きれいにはできないけれど

空はすみわたり、深く静かに星と月をたたえてる

モミの木はすこし嬉しそうで
笑っているようにも思えた
ちいさな 金の竜は
おめでとう、とつぶやいて
恥ずかしそうに、小さな声で
少しだけ
お祝いの歌を、ハミングした
鉛筆・透明水彩