大母神―神が癒えるとき―

わたしはこうきいている
だいぼしん

子を生んだ時
あまりのいたみに
死地にたおれた
大母神のからだから
穀物が生え
果物が生えた




右乳から流れ出したミルクから
とあるものたちが生まれ
左乳から流れ出したミルクから
とあるものたちがうまれた

たおれたといっても
死ぬことのない大母神は
死ぬことのないまま
死のごとく苦しみにおちただけだった
そのため
様々な厄災にみまわれた

右乳からおりたものは
ほんとうをはなし
真実を歩み
善性をになった

左乳からおりたものは
げんじつを愛し
嘘偽りを愛し
欺瞞をになった

それはらせんをかいて
くるくるまわって
なんども役割を変えた

嘘は本音からうまれ
仮面から本心がうまれて
くるくるまわった




わすれさられた時の
ほんとうのところは
みんな、母なる大母神を
こよなく愛し
護るために命をつむいでいた

ここは、その時の死の国
死と生の境の国
死なない大母神が苦しみもがき
死のごとく地におちた
ここがその地であり
むこうが、黄泉であり
あちらが、天である

……

永劫の死地で
病と穢れに苦しんできた大母神は
刻々とながれる時の癒しを借り

力を取り戻し

己をとりもどしはじめた

それは善でもなく偽りでもない
愛だった

……

大母神が癒えきる時





病と穢れからうまれたものは消え果て
天と地の触れあいが
再びはじまるという

さきがけて降りてきているものがいる
裁くもの、癒すもの、導くもの

裁くものは、清らかなる焔にすぎず
癒すものは、深淵なる水にすぎず
導くものは、美しい風だという

かれらは、病と穢れと、
それからうまれたものを
大母神のからだから、祓いおとし
癒し、清め続けている

2018-07-02 11:18:11