凪の木のあたりに幽霊がいて
幽霊はどうも魚に恋をしていて
魚がつれないと泣いている

川にはなった一匹金魚
孤独噛みしめゆらゆらゆれる
ながされるわけもなく
たゆたむわけもなく

孤独な金魚に幽霊は恋をしていて
幽霊の涙を金魚にあげる
川が日上がらないのはそんなわけで
幽霊川と呼ばれている

君を信じられなくなって何年も経った
金魚はまだゆられたままだろう
幽霊はまだ恋をしているだろう

凪の木の下に幽霊はいた
もう幾年も昔の話し
(シリーズ: イド )
2005-07-09 00:00:00