ゆっくりと海神の梺に君が居て

私の頬をゆっくりとなでる。

なぐ、なろ、なぐ、なろ。

呪文のようなときがすぎる。

君が、君に。

海神は唯笑ってそれを見る。

私は不意に。涙を。落とす。

苦しい。苦しくない。苦しい。

(きみがいて、くるしいよぉ)

君の触ったところから私の頬がチョウチョになって


なぐ。なろ。なぐ。なろ。

(いっぱいいっぱいすきだよ)

胸に熱くヒタヒタと迫る。

この想いはなんだろう。

私が海神に命を捧げると

君は目を伏せて拒絶する。

いたい、いたい、いたい。

きみのチョウチョが命になって

すきだよすきだよすーきだよ

海は穏やかだ

風もない

ちぎれ飛ぶ物は在りはしない。

ああ、在りはしないのだ。

(君は目に入れた物しか信じない)

(君は目に入れた物しか信じない)

(しかし私は君以外の統べを知らない)

なぐ、なろ、なぐ、なろ。

チョウチョが飛んでいく
(シリーズ: イド )
2005-07-09 00:00:00