ロバと王様



なんにもなれない王様がいて
なんにもなれないロバがいた
王様は愛なのか好きなのか
はんだんつかないけれど
ロバをこよなく
大切にしていた





王様はなんにももっていなかった
凡としたおひとだった
せんおうや、いく代か前の
有名な王様のように
力や才能があれば、と
思う時がたびたびあった



なんにももっていなかったけれど
綺麗な小石がすきで
小さい頃から集めていた



ロバも――ロバの耳を持つ彼女も
綺麗なもので
それでそばに
てにいれたのだ







王様はなんにもなれず
なんにももっていなかったけれど
小さい綺麗な小石のなかから
もっとも好きな形をあつめて
首飾りをつくり
ロバのほっそりした手首に
飾りつけてあげた




ロバはふるえるほどうれしかった
それでも、身分のいやしい
ロバ耳の自分が
たいそうすぎるとおもい
それで、王様に
私はいっとき
これをおあずかりしますから
わたしめの息が終わりましたら
これを王様のそばに、おもちください
と、お頼みした




王様はみずらの大切にするものが
みずらより先に
息を終える景色を思い浮かべ
(あるいはみずらが先に
終えるかもしれない)
苦痛をおぼえた



だけど、ロバに約束した
そうして、おまえ、
息がおわっても
私のそばにいなさい、
また来世があるなら
私のそばにいなさい、と
つたえた



わたしもそうするから







この先どうなるかわからない



誠実であっても
やさしくあっても
好いていても
思っていても



はたされない約束が
たまにある




ロバは
はたされない約束というものを
かんがえていた



だから
王様のおひざにあたまをのせながら
ただ
しあわせに、とお祈りした

王様も、すこし憂鬱になりながら
ただ
しあわせに、と
お祈りしていた