ヤァ、トナカイがあいさつします
クリスマスが来ます

とてもとても走り回る夜が来ます

トナカイは足を鳴らして
準備万端です

それが荷物かい?

トナカイが聞きます

「彼」はああ、と答えます
白い袋が三つ

――今年も大変だね

トナカイは言います

――そうだね

彼は服装と袋の最後の点検をし始めました

そうして、空の具合を見てみます

雪は大丈夫だろう
でも
年々、高いビルが多くなるようだ

彼は少しだけさみしく思います
こんなに高いビルの中で
ひとは悲しくなったり
やりきれなくなったりしないのかしら

それは少しだけ
人がこころを隠し
飾り立てる嘘と似ているように思うのです

――やりきれないから
きらきらさせるのです

以前そういった人もいました

「やれ、幸せって大変なものだもの」

彼は
気弱になりそうな気持を振り切るように
一度あたまをふって

それから地図をひろげ
ビルの谷間を
縫うように走る道筋を
見直しました

トナカイはそんな彼を見て
「気を張れよ」と
鼻を鳴らしました

大変に走り回るんだからさ

彼はそうだな、と笑いました
ちょっとしたすごい仕事なんだぜ
サンタとトナカイのやることは

~つづく~
クリスマス物語・1・トナカイと準備
鉛筆・透明水彩
2023-12-23 11:43:49