外はあめがふっていて
少し寒い
庭のアジサイが
花のまま
枯れていた

花のまま、
腐り落ちる
花のまま
枯れておちる
ゆかなぎは
花が好きだ

「ただいまもどりました」

玄関をあけていえば
おかえり、と
とてとて
とりさんが歩いてくる

ながらくの留守にしていて
家に戻ってきた

:

「勝手しったるところなのに
近所のお店とか
なにもかも変わっていて
ああ、わたし、
いなかったんだなぁ、って」

そう、と
とりさんはいう

さいきん、コーヒー豆を
豆から粉にして
淹れることにこってるんです

灰汁の味と
コーヒーのあじが
ちがうことを
はじめてしりました

たまに。
テキトーな量販店の
テキトーなコーヒー
灰汁の味ばかりで

けんこうにいいから
ぐーっと
のんでしまいますけど

そう
ゆかなぎと
まるで話にならないことを言う

じぶんがいままで
苦手としていたのが
灰汁の味だったんだって
おどろいた

:

めが悪いときがあるんです

めが悪いと
なにもかけない
ゆがんでしまって
これじゃない、って
こうじゃないって
むきになって
やるほど

見る目が。わるいから
できないんですよ
それで、つかれて
やすみこむ

ああ、あるある
おもしろいもので
コーヒーもね
そんな時にいれると
灰汁ばかりでます

:

家に帰れないあいだ
家を出たら
帰れなくなった
猫の話を思い出した

:

とりさんをソファのようにしながら
ゆかなぎは鞄から
買ってきたお土産をとりだす

綺麗でしょ
文字はわかりません
あちらの絵本で
いちばん、きれいなの
かってきました

とりさんは少し笑う

ゆかなぎが帰って来てほっとした

わたしも
家について
ほっとしました

:

そとの雨は音をかえて
また深く降り始める
大雨になりそうだ

布団にはいり
電気をけすと
実家のにおいがして
ゆかなぎは
2、3回
息を大きくすってはいた