愚痴

しかしその
さわさわとした夜の中
あまりにふさふさの
綺麗な金色の草花が
さわいでいるので
あたしは、泣きたくなるのでした

あたしは、
黒毛の猫になって
おおきく伸びをしました
当たり前ですが
太陽でしたら白毛が
月明かりでしたら
黒毛が気に合うのでした
そういうものなのでした

あたしは背中をちょうちょうしながら
夜を歩きました
あまりに静かでした
金色の草、すすきのようなふさふさなそれが
月の光を浴びて
たくさん輝いているのでした

 そう、でも
 あたしはいつも
 人をせめたいような気持ちになる
 
 それはきっと
 どうしても
 納得いかないのでしょう

あたしは、
あたしを受けいれられない人の傍に
居たいとは思えないのでした
あたしは
あたしをいじめる人の傍に
居たいとは思えないのでした

あたしは
あたしを受け入れないところに
いつも、いつだって
居たいとは思えないのでした

それは
嫉妬、とも
嫌悪、ともつかない
その人の中にあるものが
苛立ちと怒りを呼び覚まし
あたしの姿をかりて
自分の姿ですのに
あたしのせいだと
ののしるのでした

いつも そういった人は
あたしが
じまんしいしいで
なまいきで
うぬぼれていて
とくべついしきがすごいんだ
ぶれいで、しっけいなやつ
うやまいのないやつ
そういう風に思えるらしいのでした

あたしはそういった人の中に
とくべつしきがある気がしてならないのですが
それは、わかりません
あるいは、こわいのでしょうか

あたしは思います

だけど、そこをあらえば
その人は、あたしが誰よりも大好きなのでした
それで、あたしはいつも
そういった人が
思いちがいをするほど
おびえているように思えるのでした

 そう たしかに
 好きというものに
 恐怖と、不安、あるいは
 劣等感が
 からんだら
 人はあいてを
 憎むのかもしれないです
 あるいは
 それを
 いじめてしまうのかもしれません

 どうして人は
 自分の感覚と
 人の感覚を
 区別できず
 自分の感覚が人の感覚と
 ひとしいと
 思いこんでしまうのでしょう

 どうしては人は
 たがいが違うことを
 どうしても
 納得できないのでしょう

あたしにあるのは
その人にないものなのでしょう
その人にあるのは
あたしにはないものです

 あたしが愚痴ぐちと考えていたら
 上の方で鳥が笑いました
 その鳥はいつも
 あたしのそばにいて
 あたしを笑うのでした

あたしは知っていたのでした
そう
とてもよく
知っていたのでした

 おまえの言葉にする前に
 おまえのこころを
 ようくといてご覧
 ようく 透かしてご覧
 見てご覧

 それが 思いやりでも
 愛でもない
 ただひたすらな 悪意なら
 口の中にとじて
 すぎさるまで
 まってご覧

あたしは もう
いじめられるのは
いやなのでした
そういいましたら
おばかだね そう 鳥は笑いました

 またあたしは歩くのでした
 鳥も歩くのでした
 空には月が
 かかっていたのでした

お前の心の底は お前にしか分からないし
お前にしか さらえないのです
それは お前ならば
お前をすくえる そういうことです

 愛しております
2011-08-03 12:50:29