私の自業

ただ冬が来ました

 とうさん あの人はなぜ
 おとななのに やさしくなれないの と
 お聞きしました
 そうしたら 笑われました

とうさん
拒まれても その心を
受け入れなければならないことに
たまに 苛立ちと疲れを 覚えます

だけど 扉を閉ざす気持ちも
私には 分かるような気がします

 とうさん わたしはわかっているのです
 教えることなど いっそうできないのです
 きっと 教えたいと望んだ人は
 たくさん いたのです

 だけど とうさん
 わたしはわかっているのです
 それは つくしてもつくしても
 言葉ではないのです
 勉強ではないのです

とうさん 私は分かっているのです
わたしは 与えるだけなのです
教えることが できるなど
 どうして だれが できるんでしょう
 それこそ 傲慢なのです
 それこそ 自惚れなのです

 とうさん

とうさん あの人はなぜ
たくさんの理由をつけて 愛と思いやりを
自分だけはしなくていいと 望むの

とうさん あの人はなぜ
たくさんの理由をつけて
自分にだけは 罪はないと
おぼえるの

 人の敵意は
 許せないのに
 自分の敵意は
 ゆるせるの どうして

とうさん あの人はなぜ
傷つけたことは 忘れて
傷つけられたことには
しがみつくの

 とうさん わたしはわかっているのです
 とうさん わたしは
 わかっているのです

冬が来たのです
そして冬の空には
やはり星が幾億もまたたき
たくさんのうたを鳴り響かせていました

 とうさん

 とうさん これが私の自業です
2011-08-03 19:55:25