カエルに私

柔らかな金色の雲が
灰色の風に
たくさん運ばれていきました

薄い青いところに
ひかひか光る
しろい星が
昼だというのに
見えていました

ハイビスカスが
笑っていました
あはは
あははと
笑っていました

太陽はあつく
風はただ
草木と生き物の間を
熱をさますように
吹いていました

きみ もしかしたら
人の不幸を
願うのでしたら

きみは まだ
不幸を
知らないのでしょう

カエルが歌っていました
私は人をつらぬくぐらいなと
みずからの胸に刺した
氷をゆっくり
ひきぬきました

人を愛せぬというのは
たしかに
氷でこころを
つらぬくような案配です

きみ あんな不幸は
もう誰にも
起きてほしくない
きみ もし
人の不幸を
願うのでしたら
きみは まだ
不幸を 知らないのでしょう

あるいは
人を 愛していないのでしょう

私はカエルに微笑みました
地面はぐずぐずで
たしかに息吹の音がしている

生きることは
生きることは
泣き笑うこと

もしかしたら
赤子が泣いて生まれるように
泣き声は
生きることに
近いのかもしれません

風はやまないようでした
ただみゃんみゃんと
限りなく
さけびくるい
熱をさますように
吹き荒れていました

地面はぐずぐずでした
太陽はあつく
木々はやがて
腐りながら
生まれ変わるように
前を見ております

ただ 育むものは
目線をさげない
水がしみこむように
みずからの力を
ただ ためこみ
すべてを糧にする

ただ 育むものは
下を見ない
まして
みずからの生き方を
人の責にして
下らせない

見上げれば
夏でした
入道雲が
まあおい空に
フクフくと育っていました

私は
この世と命を
愛しております
2011-08-11 13:31:26