白雲

銀色の砂浜に
やわらかな 太陽が
金の光をみたしていた

ぴかりぴかり光る
砂を歩いて
わたしは小さなかのかたと
ふたりで散歩していた

たどりついた白金の岩影から
たくさんの滝がながれ
傍にやわいだいだい色の桃がなっていた

そのかたは
滝上からおちてきた
魚の口から
真珠をひろったと
まことしやかな話をして
耳のうしろに
美しい七色の貝殻を飾った

私はあたたかな日差し
ただ、たくさんに浴びないように
ましろい日傘をさしていた
微笑めば
まだ年端もいかないそのかたは
鈴なるようなやさしい声をたてて笑った

私の微笑み いっとう 好き
はなしより 好き

そう言われるから
わたしはこそばゆくて
抱き締めたいと思った
かのかたは
私の隣にすわり
わたしはかのかたに
差し上げようと
日傘を肩にして
白くうすい蓮花で
かんむりをあんだ

わたしはかのかたが
大好きだった
かのかたは私の膝にもたれて
美しいわね と おっしゃった

わたしはかのかたが
大好きだった

ふと、気がついた
これで良かったんだ

わたしは出来上がった
白くやわらかな
あたたかに光るかんむりを
かのかたに差し上げようと
ふりむいたら
丁寧にかのかたはお辞儀をして
頭を下げてくだすったから
わたしは誇らしく
かのかたに
かんむりを ささげた

―― 忘れておりました

そうお伝えしたら
かのかたは私に笑い

―― 長旅でした

そう おっしゃった

明日 やさしい風が吹いて
木々はやわらかにしなり
秋になったら
綺麗な紅葉になるでしょう
紅葉はお好きですか と
お聞きしたら
春のが オスキよ と
膨れっ面するので

愛しくて
たまらなかった

願い かなうなら
微笑みの 幸せを
どうか

かなうなら

やわらかな風が吹いて
白く美しい雲が
太陽をなでながら
流れていった
2011-08-28 22:39:01