取り戻せる

―― 今日ね

わたしがいう
あなたは、花畑の中で
きままかってに
花を摘んで遊んでいる

―― きょうね
こどもが、おとなを
おこっていた
とても、いらいらと
おとなが、きらいだと
おこっていた

そうね

花を摘んだあなたは
花冠を器用に5秒ぐらいで作り上げて
私にくださった

ふわ、と
銀金の花が
頭の上に踊る

―― きみは つかれているね

―― うん

返事をしたら
ぽろぽろ、涙がこぼれた
ぽろ、ぽろ

ああ、泣きすぎて
なきすぎて

―― ねなよ
 こもりうたを
 うたってあげるよ

―― うん


こどもは おとなを 恨んでます
こどもは おとなが 嫌いです
おとなは こどもを 見られません
なぜなら 大人の前にあるのは

 じぶんでも こどもでもなく

 他人でもなく

 欲や、 「世間」 だから です

―― ねえ

―― うん

―― でも、それも
 うわべのことよね

―― …… うん

―― 一人の涙は胸に沁みこむ
ふたりのなみだは
温かい

ただ、涙の海にいて
あなたと話をしていた

―― だれがわるかったの

―― どうだろうね

―― どこでまちがったの

―― わからない

―― わたし

 わたし この世 この時代に

 うまれて よかった

―― そうだろうね

―― 取り戻せるわ

―― やり直しでは、なくて

―― やりなおせないでしょう

―― …・・・

涙の海のそこからみあげた空は
まっきいろの
レモンみたいな月が揺れて
銀色の泡にとりかこまれ
ふわふわしていた

―― とりもどせるわ

つぶやいた声が
あわになって
空にのぼっていった

もう一度、いった

とりもどせるわ。
2011-10-02 00:01:50