羊のよくある話

白い羊はもごもごと
くちごもりながら
いうのですが
それが、なんと言う意味か
わたしには
わかりませんでした

みんな 正しいのよ
自分がね みんな
正しいの
自分が みんな 正しいのよ

もごもご 口を動かす
ももいろの鼻は
とてもかわいらしく
すぴすぴと
音を立てていました

やわらかい草が
地面いっぱいに生えていました

おまえに不思議な話をしてあげよう

ある 老人が居ました
老人は ある 若い者を
きらっていました

きらい きらい きらいながら
しっとし しっとし しっとし
おとしめ おとしめ おとしめ

彼のそばから
そいつが居なくなることを
のぞんで
なんども なんども
そいつに罵倒を浴びせ
そいつの場を
なくしました

そいつが居なくなった瞬間
老人を襲ったのは

 おそろしいほど
 説明のつかない
 くろい もやでした

 自分は悪くないと
 老人は思い込もうとしました

うまくいきませんでした

 自分はそれほど悪くないと
 思い込もうとしました

うまくいきませんでした

 自分はあいつが好きだったんだと
 おもいました

だいぶ うまくいきました

 罪の意識は消えませんでしたがね

焦がれ 焦がれ 焦がれ
嫉妬し 嫉妬し 嫉妬し
胸を波だたせる その存在を
目の前から 消したかった

それは お前のどす黒い思い

 くろい くろい くろい おもい

胸のなみうちはいつも
憧れだったのではないでしょうか

 だけど おまえは
 おまえをもって 人を
 好きになれなかった

いつもね
いつだって
自分が正しいんです
みんなね

やさしくなろうと
必死にならない人は
人を非難し 中傷し 傷つけながら
それでも
自分が やさしいと
思い込んでいる人

嫌われても 自分が悪いとは
思えない人

いつもね 自分が正しいんです みんなね
自分が、正しいんです
2011-10-20 11:20:13