ゴーゴン

深い夜空に
髪がゆっくり動く女がひとり
姿は見えなかった
ただろうろうとした
歌のような
声が聞こえた

―― 月はぎらぎらして
まるで、魚の目のようでした
あれは、つきですか
そう聞くと
なんにも
誰も答えない


―― 私の周りには
だれも いなかった


―― しかし
蛇女をたおしたのは
騎士であり
鏡でありましたが
蛇女は
鏡でみずからが
くちること ほろぶこと
わかっていたのでしょうか

蛇女をたおしたのは
騎士だったのか
それとも


蛇女は たおされたのか


―― あなたの真実 は
あなたを石にかえる


―― あれは
 真実をうつす
 鏡だったように思う



―― 石に変えられた
 男たちもまた

 ゴーゴンだった



―― ゴーゴンは自分がわかっていたの?
 それとも
 わかっていなかったの

 だれもが
 おまえのまえで 石にかわった
 それをみた おまえは
 どう、おもったの




―― 壊れ落ちるように
生きている気がします
壊れ落ちているのは
いままでの 私でしょう

―― 私は、呟くように
いいました
だれに
聞こえても
聞こえなくても
構わないようでした

―― どんな能力があって
どんな地位があって
なにをしていても

大切なのは
人間性でしょう

―― あるものが 害悪ではなく
他を
おもいない
己にしかおもいない
他に愛のない
人間の手により

あらゆるものが
敵意悪意の
害悪を生じます

正しさの怒りは
ただの敵意

敵意悪意 それより
異なりと
かかわれますか



―― 青く明るく
色濃い夜空から
パラパラと
冷たい雨が
降り始めました


――

――

傷つくぐらいなら
ひとりでいたほうがまし
だから 愛があれば
大丈夫だと

どんな人とはなれても
大丈夫だと

なんて 傲慢だったんだろう

 愛ではない
 それは 愛ではない

 ただ の 特別な わたし  すがり ついた


――

 ひとりきりになりたくないのに
 ひとりきりに ならざるえなかった

 他人 異質 異なる人を
 認めることが できなかった


―― 石に変えざるえなかった

――

 ゴーゴンは

――

――






―― では ごきげんよう

ごきげんよう

また会いましょう
2011-10-30 19:40:27