夜分におそれいりますが
と、鬼が入ってきたので
ああ、いやだなぁ、と
思いながら
赤い赤い花を生けて
そのまえで
茶を飲みあった

―― 怒りというのは
赤と黒のドグロドグで
ぐろぐろとうずまく
熱、で ございました

そういえば鬼は
なにもいわず
金色の角と目で
ただ、酒を飲んでいた

―― 人を見ていた己の目をはずし
それでも 人が と
わめく己をなだめ
ひたすら懸命に
己を見れば

―― わたしが 人をどう見て
私が 人にどう感じ
それを どうしたいと
わめいているのが
わかるだけです

―― わたしが 人に 何をしてきた

鬼と熱い茶をのみながら
ああここは随分
苦しいものです
地獄 というのは
ざわめかしく
人の怒り 怒り 
責め 責め 責め

人の劣悪を数え
私の劣悪をなげき

ああ ここは 随分
くるしい

―― 欠けたものを 数えても
 しようのないこと

やがて朝が来て
名前を呼ばれて
お美しい お声でよばれて
きがついた

私は独りで生きてきたわけではなく
ようやく また ひとつだけがわかり
幾千万のトゲにさされて
歩き始めるようです

 血の池も 針の地獄も

 あじわいましたが どうも
 ずいぶん ほんとうに いたく

 苦しかったです


私は自分が出来た人とは思えない
ただただ 人になりたく存じております

このような私が
 愛をしり 愛されていることを覚え
 人の思いの中に 愛を見つけてこれたのは
まったくの奇跡だと思うのです


奇跡は世界に落ちております
愛が奇跡でなくて なにが奇跡でありますか


たとえ地獄に落ちても
私は 愛を 愛し
よろこぼうと 思います
2011-11-17 12:31:47