赤い山茶花

赤い山茶花が
雨に咲いていました
夜はまだぐずぐずと
朝が来るのを
邪魔していました

怒っているの と
聞かれましたから
ただ 怒りばかり
回っているのです
そう 申し上げました

なにもかも 理不尽の上
生かされております
私も 人も
世界も
手前勝手な理不尽

理不尽に怒る気は
ないのです
勝手が本質だからです

ただ 怒りばかり
回っているのです

怒りばかりの私にも

―― 毒を喰らわば
皿までも
一滴 のこさず
喰らいましょう

私は ただ
情けない人間です

しかし心は
蟒蛇でございます
糧にならないものは
ひとつ ございません

どんな思いも

―― 心は
いずれにしても
出したものに
報うように なればいい

―― もう なっているよ

―― そうだね


私はふと
おかしくて
笑いました

理不尽が蔓延し
己とて理不尽
他にも自分にも理不尽で
手前勝手な生きざま
なのに人の
世界の
他人の理不尽には
嘆き怒り苦しむ
矛盾が
おかしかった

雨に山茶花は
色煙り
赤いぼやが
揺れるようでした

美しい月が
わずかな雨雲の切れ目に
見えるようでした
2011-11-19 10:13:24