赤の金魚

れうれうとしたたりおちる
あかい、しずくのつながりのなかに
金魚がたくさん
泳いでいる
背鰭が、金色で
ゆなゆうゆうと
いろはためく

どうしたろう、と
きづけば 鍾乳洞の様なところにいて
ひとり、鬼人と
むかいあっている

小さなきれいな鳥が ぱたりん、ぱた
ぱたりん、ぱた、と
とびおり
美しい声でさえずる

 こちらに、まいります

なにがか、そう鬼がいい

 魚でございます

鳥が鳴き、こたえる
はっとした瞬間
だばだばと
たくさんの魚が
白や、赤や、あおの
たくさんの魚が
川をあわだてて
洞窟、うっすらと光る
やわらかなみずうみに
きらきらした
ひかりのあわを
たくさん撒き散らし
たくさん、およぎのぼり
やがて騒然としたあわは
おだやかになり
そこ、ここの魚は
ようやく落ち着いたように
あたたかな、
なかから
光がわくような
日だまりの
みずうみに
たうたうと
流れるる

鬼をみれば
そのかた目に
なにか、いいしれない
青色の泪がしたたりおち
それが、みずうみにたまり
ひかるようだった

かなしい

私が、なくのではなく
その泪が
かなしい
ぬぐおうと
はんかちをとりだし
だけど、鬼が
遠くにいるから
ぬぐえない

ぬぐえない泪が
いっそう、せまってくるから
紫のはんかちを
にぎりしめて
たちすくめば
あなたは

なきなさい

そういう

なみだなど、
あなたが、流しているのに

なら、わらいなさい

そういう

ふ、と
わかれば、ただ
だあだあと
なみだが
私の目からながれおち

苦しくも、
かなしくもない
あかるい、なにか
空のような
なにもないのに
うすいあおが満ちたような気持ちだけが
なみだを、ながれおとす

だあだあと、だあだあと

なみだか、わらいしか
ないんだよ
かなしい
おかしい
それしか
ないんだよ

ただ、君が好きだと思う

2012-01-08 13:04:38