ひり、ひりひりとした
なにか、あさく
耳が震えるようなおとがして
みあげたら
真っ赤な天に赤黒い鳥がたくさん、たくさんとんでいて
怖い、と、思う

祈るような気持ちになりながら
胸のなかの大切なものをかかえ
ふと、これが、なんだったのか
忘れていることに気がついた


なんでしたか、
なにか、大切なのに


思い出せないことが悲しくなって
ただ、大切だとわかるだけ
だきしめ、だきしめ
どうか、どうか、と
黒くうすい葉が沢山生える道を
ひたすら歩くけれど
だんだん、早足になる

真っ赤な月がやけに大きく
真っ赤な空にのばりはじめ
烏なのか、ぎゃあぎやあと
さわがしい

あ、と思ったらころび
大切だと思うもの
守りたいあまり、肩からおちて
痛んで泣きそうになると

すまなかったね

声がしてふりかえれば
白い蛙が私をみていた

すまなかったね
石のふりをしていたら
おまえ、つまづいてしまったね

それで、いいえ
つまづいたなら
あなたこそ、痛くはなかったですか
そうたずねたら
かまわないんだよ
そう、わらわれます

急に気持ちが一杯になって
なみだがもりあがり
だけど、なくのはおかしくて
ごめんなさいと
嗚咽をあげながら
こらえれば、こらえるほど
涙はながれてしまう

蛙さんはあわてて
ああ、すまなかったね
痛かったのかい
そう、いいますから
いいえ、痛いのではなくて
寂しかったのです

そう、いったら
そう、では
一瞬にいよう
荷を、とどけるんだろう

その途端に思い出しました
荷を、おやかたさまに
とどけなければならないのです


ともに、いてくださいますか
そういうと
蛙サンは、ああ、お前のふところにいれておくれ
そういわれ
わたしは、ようやくあんどしました
2012-01-17 22:14:19