いびつ

だあんだんと
海なりのような音が響いている
ただ真っ白くあかるい月が
くらい空にまっすぐのぼり
砂浜をぼおっと白に光らせている

歩くたびに後ろに紫色の足跡がついて
おもしろがっていたら
目の前に、きゅうに
ぼんぼろの笠をあたまにのせた人がいて
それが、ぼつっと、いう

きらいはんはん、すきはんはん

問いかけのようだ

笠をかぶった人が笑う
泣いたのかもしれない、よくわからない
空気が漏れる音だけが、ぼってりと
あたりにひびいた

ないのないの
あたま、すべて
けしてな、こころしか
のこさんと
やわいやわい、あたたかな
ぶよぶよになる
あれが、人の核なら
みな、よくよく
外にむけて、こわばるだけだ

欲な、我な
あれはこわばりだ

なぁ、

笠の人は、それぎり、
くちをつむぐ

ふいに、ひとをあたたかに
愛しいと思い、胸苦しくなる

―― あるのは、ひとの気持ちだけだ

ゴオオオっと
かぜがふいて
空に鳥のようなものがとんできた


おまえ、おまえ、
おまえ、おまえ、

それが、さけぶように鳴く

おまえ、おまえ、おまえ、おまえ

真っ黒い夜に
冷たい風はやたらと吹き流れ
白く静かな月が
荒れる音の中で、ただ
やんわりと浮かんでいる

――我をこわばらせ
外に強くはりだせば
ひとを、くるしめる

―― 否定しないで、いけたらな

なんで、否定する

―― じぶんと、くらべるからだよ

隣の人は、きっと石だろうな
話ながらおもう

石なのだろう
おかしくて、わらう
2012-02-18 22:25:20