ウサギと亀

真っ白い雪の中
まみどりのひいらぎが
うもれていました

しずかな音のない公園に
いっぴきのうさぎが
ひょうひょうとはいってきて
おお、いけない
遅刻しそうだ、といって
くすくす笑いました

公園のむかいにある家の窓から
のぞいていた男の子は驚いて
うさぎはしゃべるの?と
お母さんに聞きました
うしろで洗濯物をたたんでいたお母さんは
うさぎもうさぎにはしゃべるんだろう、と
こたえました

へぇ……、と
男の子は言います

うさぎは白い雪がよほど面白いのか
ぴょうぴょうと
公園中に足跡をつけています
すこししてから
亀がのっそりのっそりはってきました
おおい、まってくれ
寒くて眠いよ
寒くないよう、ホッカイロをあげたじゃないか
あつくなって
つけてられないよ

しかたがなさそうに
肩をすくめ、それからウサギは
亀の横に寄り添って
耳をマフラーみたいにして
あたたかいかい、と聞きました
亀は、ああ、まぁ
すこしはね、と
そっぽをむいて
あんまりつまらなそうにいいましたが
かたほほが、うれしそうでした

それからゆっくり、ゆっくり
にひきで歩いていきます

俺はね、さきほど
不思議な国のアリスのウサギのまねをしたんだよ
なかなか、良い塩梅だったと思う
そうか、フシギナクニノアリスは
おれはしらないが
おまえがそういうなら
きっといい塩梅だったんだろうな
うん、と
ウサギは言い
そうか、と
亀は言います

おとこのこは
そうか、ウサギと亀は
話すんだなぁ、と思い
おとこのこの後ろで
洗濯物をたたみおわったお母さんは
寒いから窓を閉めなさい、と言います

真っ白な空から
おおつぶの雪が
ぼったりぼったり
おちてきます
2012-03-02 12:22:07