鳥と蜥蜴

おさないころ
きらいなものを
わるいときめて
きずつけるのが
勇気だった

強さだった

決めつけるのが
りかいだった
従わせるのが
優しさだった

あたたかな思いは
本能から湧いて
優しんでいたいと
みな、きっと
嘆きながら

にくしみが
罠だなんて
もう、ずいぶんまえに
わすれてしまった



あおい草のすきまから
透明なみずが
こんこんとわいております
ひたすらに湧きでてだまになり
わずかに土にしみこみながら
あふれてながれ
そうして細い川になり
きらきらとヒカリながら
まちのほうに下っていきます

まちのほうは
大きなビルとちいさな家がいっぱいあります
そのうえに
あかいあかい夕陽がゆっくりたゆんで
ビル影を青く赤くふちどっています

蜥蜴のぬらりは
川で跳ねる小魚を
よこめでみながら
あのまっしろい
あたたかなものが
またしずんじまう
まっくろい
しずかなものが
そらをおおう

おおう、おおう

さけびます
夕陽をみるたびに
叫びたくなるんです

ビル、ビルにひかりがついて
ちかりちかりとまたたき
たくさんの車やなにかのライトが
流れるひかりの川になる

人間たちは
星をつくる
すごいが
あれはこわいな

そう、おもう
細い川にくちをつけて
ひとつ、ふたつばかり
みずをのみます

蜥蜴は寝屋をどこにしようか悩みます
いぜん、ちょっとまちがえて
ひろくわかりやすいところに寝たら
子供にとらえられ
しっぽをきられたことがあります
ううん……と
蜥蜴は悩みます
人間たちの寝屋ちかくは
あたたかだが
すこし、こわいな……

ゆっくり陽は沈みつづけ
あおく暗い空に
金色の月がのぼりました

ちいさな鳥がきて
川の魚をくわえました

なあ、と
それから蜥蜴にいいます
人間たちのなかで
おれらのほうが優しく
人間は残酷だなんて
いうやつが
いるんだが
おまえ、どうおもう

蜥蜴はその目をみながら
すこしかんがえてこたえます
……人間はこわいな

野生のほうが
残酷だよ……
人間たちは
つよいからな
気づいてもいない
わかってしまえば
優しい
あれは
人間たちのつよささ

蜥蜴はくびをかしげました
鳥のいっていることは
さっぱりわかりません
こいつは
どこかでなにか
わからないものを食らいでもして、
消化不良なんだ

蜥蜴はやれやれと頭をひとつふって
やっぱり今日は寝屋は
あの石の下にしようと思います

鳥はビルや車や
家々のひかりをみながら
思いわずらいます
2012-03-20 12:08:36