こがえるかえる

泉わきでて
透明にしずんだ影のなか
とくとくとした
池のほとり
白い花びらを
金にかれつつ
花がさいている

そのみずのなかに
なにか金色のながい魚がいる

たうたうと
こもりうたのような
ちいさな音がひびいている

なんだとおもえば
遠くのそらに
鳥のような、太陽のような
ましろくゆれるものが
ぼうん、ぼおん、と
ないている

手のひらには
さきほど編んでいたセーターが
いつのまにか寝ていたわたしを滑り落ちて
くたくたにまるまっている
あおと赤のセーター
冬にはまにあわない

わきからにひき、
みどりときいろの小さな蛙が
ぴょんぴょんきて
桜を揃ってみあげる
まだ、わずかな咲き始め

ちいさなほうが
すこしばかり
おおきなほうに
ぷてらのどんがいたころも
さくらはあったの?
と、聞いていて
おおきなほうが
桜はあっただろう
すくなくとも、はなはね
ぷてらのさんが
好きだったかは知らないけれどね
そういう
ちいさなこがえるは
与作どん、みたいな
名前じゃない、と
けろけろわらう

……どうしようもないものが
ぼろっとあって
それは諦めとも違い
なにかとてつもなく
どうしようもなく
うごかせない…

かすかな遠音に
誰かがうたっている

花びらが気がついたら
なにかひらひらと
ながれおちて
それがひどく美しくおもえる

どうして桜はあるの?

さあ、しらないよ
あるだけだなんだと
おもうよ……


つかむことさえ
できない空はあるの

ないよ
在るだけ……


太陽かと思ったが
ましろく輝く月のようで
それがやはり
歌っている

こもりうたのような

2012-03-20 16:17:54