モウコ

風がだいぶ流れ、はやくなり
そうして家につけておいた鈴が
らんらんりんりんなりますから
モウコは髪をしばっていた縄をといて
外に歩き始めました

風が良い日は
髪をほどくのがよいのです
しがみついていた思い
かんがえ
痛みが
ながれ、ほどよくとけていきます

父から譲り受けた
古カバンの中には
数の練習の本と
ハーモニカを持ちました

モウコはほんとうはオカリナがほしかったのですが
どうしてか、オカリナとハーモニカを
間違えて買ってしまったのです

それから自分の家の
いっとう高いところにある窓から
風の様子をみます
良い具合に香り豊かに
濃い空ふぶきです

たくさんの思い
あか、きん、きいろに輝きます思いが
風にのって
透明な花となりひらきながら
香りふくんで
モウコのそばを
るうるうと流れました

それからモウコはその部屋の窓に
穴を風のふくほうにしてハーモニカを固定し
そうして眼をつむりました


とうりんろん
とうりんろん


ハーモニカで
風があそび、
ながれ、ながれ
そうして夜のほうへ
ながれていきました
2012-06-06 17:33:28