貝殻に

やわらかな
ただ、さむさむとした
海辺のほとりで
白い白い綺麗なかいがらが
ゆめをみていた
淡いぱちぱちとした
はぜるような夢
おぼつかず
見たり覚めたりしていた

ゆめうつつにも
七色のからだに
ひかり、あびて
キラキラと瞬いている
おもての
とげとげに
やさしげな
白のあとをのこし
ひかりあびては
ちかちか瞬く

ーーろろしろ、ろろし
ゆめみるような
きれいなかいが
ひつようなのたか

そうして
そこにひとりの漁師が来て
やわらかな
昆布のような黒髪と
海藻のようなキラキラした目で
海辺をさがしはじめた

ひとつ、ひとつ
漁師のわらじのあしあとが
ましろい砂浜についていく

ふかいところに
あおいあおいかげがおち
灰青の雲の影は
そのうえを
おおきな魚のように
あそばれて
ながれていく

さくりさくりと
あゆむ漁師のあしあとは
やわらかな小さな魚のようで
だこうしながら
それでも貝殻に近づいていく

貝殻にきがついて
漁師が安心したように
ため息をおとした

貝殻もどうじに漁師にきづき、
ああ、ゆめにまでみていたが
とうとうであった
このひとだったか
そう思う

漁師が貝殻をひろいあげる
丁寧にぬぐわれていくうち
貝殻はおもう
優しい日だ
佳き日だ

佳き日だ

そうしてまた
眠りにおちる
2012-07-24 23:20:18