まっくろな木々のなか
赤い実が風に揺られていました
さうさうさう
さうさうさうと
風がうたっていました

気がついたら手のひらには
勝手に歌う笛があって
その笛が
そうそうそう
そうそうそうと
鳴るのです

骨のような白い笛で
暗闇の中で
青白く光り
そうそうそう
そうそうそうと
鳴るのです

そうして闇の中
ざわざわ鳴る木々の中
そうそう鳴る笛とともに
歩いていると
赤い実はやわらかくゆれ
おいしいわよ、と
云ってきます

ひとつほどとって
口に運べば
あまりの甘さに
ホロホロ涙が流れます
ずっとずっと
こんな甘い実を
食べたかったように
思え
ぽけっとからハンカチをとりだして
涙を拭いましたら
骨のような笛が
そうそうそう
さうさうさうと
いうのです

それで骨に口づけしたら

むかしむかしの話です
彼はやっぱり泣いていて
ああ、痛みは誰にでもあって
やっぱりだれでも泣くのだろうと
思えたのです

そう、骨が云ったのです

とてもなきそうな人じゃなかった
ふてぶてしくて
ふてぶてしくて

暗がりの実を
もうひとつもいで
口に入れ
あまりの甘さに
やはり涙は流れます
さうさう
そうそう
風はながれ
赤い実は
やわらかな闇に
ひかりながら
揺れています


そうして
上を見上げれば
薄くあおい雲が流れ
隠されていた月が
おそろしいほど大きく
ひかり、ひかりと
輝いています

さうさうさう
そうそうそう
たまにかれに
すまなかった、と
いいたくなります

すまなかった

だけどなぜかは
わからない
ただ
いつも

ひとは いつも
だれでも
流せない涙を
のんでいるのだと
思えるのです

さうさうさう
そうそうそう
そう、つたえながら
風はながれ
暗がりの実は
月明かりに光りながら
あかく怪しく
きらめき、ゆらいでおりました