ひとりのおばあさまがいらして
今は全く何でも手に入るから、と
おっしゃる
理屈でも、哲学でもなく
思い、考えでもなく
なんの重さもなく
――いまは、なんでもてにはいるから
そう、おっしゃる

だからでしょうか
ぬくもりを
てにいれるすべが
わからなくなるもんですね

そうして
なんだか透明な
きれいななみだを
たとたとおとした

なんででしょうね
ふと気が付くと
たったひとり

いまはなんでも
てにはいるから
ひとを てにいれることが
むずかしい

ひとのてのひら

わがままと甘え
いぞんと好き
どこまで、どこまで

わたしらしくとか
あなたらしくとか
すこし、わかりません
いまはなんでもてにはいるから
ひとのてのひら てにいれることが
むずかしい

 どうしたら
 ひとが そばに
 いてくれるんでしょう

 どうしたら
 ひとと ともに
 いられるのでしょう

それからおばあ様の涙を集めて
花を活けて
ふたりでお茶を飲んだ

いまはなんでも てにはいるから

口癖のように言われる
なんにも、手に入れられなかったように
さみしそうに、微笑まれる