花の星
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エッセイ
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てんてこ
> 猫と手ぬぐい
おだやかで、あたたかな日差し
それなのに空気が湿って
まごついたように
雨が、たすり、たすりと
たまに落ちては
あたりをかすかにぬらしている
縫いかけのてぬぐい
少し疲れてひざにおいて
窓へふりむいたら、いつの間にいたのか
黒い猫と目が合った
私が急に振り向いたから
おどろいたのか、小さな口をあけて
声もなく鳴く
「おや、おまえどこのこ」といいかけて
ふっと、思う
猫してはすこし大きい
いいや、大分大きい
オオカミのように大きい
金色の、澄んだ目
てぬぐいひとつほしい
猫が言ったのか、それとも雨音のそらみみか
てぬぐいほしい、と
また聞こえる
「ううん、おかしなこともあったものだね」
どうせ、と捨てる予定だった服さいたら
思ったよりつくりあがった
手ぬぐい
ふたつもみっつもあるんだ、かまわないだろうと
ひとつつかんでほうったら
口でうまいこと咥える
ありがとう
やはり少し、おかしいような気がする
窓は半分閉じかけていて
その先のあみどはきちんと閉じている
猫はどこから入ってきたのか
毛並みをひとつふたつぶるぶるふるわせて
澄んだ目をにょんまりまげて
ありがとう、と
また、そらみみのような声で言う
やはりおまえがいっているのか
聞こうとしたら
あみどのわずかな隙間から、
すいこまれるようにして
出て行った
窓が、ほんのわずか
音をならすように、揺れた
てぬぐい、いいんだ
こういうひには
目をしばたけば
肩がゆっくりあがりさがり
立ち去る獣の後姿、
その頭にかわいらしく
白い手ぬぐいをかぶっている
雨が降る前に
てぬぐい、ほしかった
ぼうっとしていて、
は、と気づく
洗濯物、いれなきゃね……
雨が降る前に
縫いかけのてぬぐいと針
裁縫箱しまって
たとたと二階にかけあがる
空はだいぶぐずついている
雨音に、耳かたむけて
気づきもせずに、縫っていた
かなこのかなこの、どこかで鳥が鳴いていた
2013-03-10
00:00:00
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それなのに空気が湿って
まごついたように
雨が、たすり、たすりと
たまに落ちては
あたりをかすかにぬらしている
縫いかけのてぬぐい
少し疲れてひざにおいて
窓へふりむいたら、いつの間にいたのか
黒い猫と目が合った
私が急に振り向いたから
おどろいたのか、小さな口をあけて
声もなく鳴く
「おや、おまえどこのこ」といいかけて
ふっと、思う
猫してはすこし大きい
いいや、大分大きい
オオカミのように大きい
金色の、澄んだ目
てぬぐいひとつほしい
猫が言ったのか、それとも雨音のそらみみか
てぬぐいほしい、と
また聞こえる
「ううん、おかしなこともあったものだね」
どうせ、と捨てる予定だった服さいたら
思ったよりつくりあがった
手ぬぐい
ふたつもみっつもあるんだ、かまわないだろうと
ひとつつかんでほうったら
口でうまいこと咥える
ありがとう
やはり少し、おかしいような気がする
窓は半分閉じかけていて
その先のあみどはきちんと閉じている
猫はどこから入ってきたのか
毛並みをひとつふたつぶるぶるふるわせて
澄んだ目をにょんまりまげて
ありがとう、と
また、そらみみのような声で言う
やはりおまえがいっているのか
聞こうとしたら
あみどのわずかな隙間から、
すいこまれるようにして
出て行った
窓が、ほんのわずか
音をならすように、揺れた
てぬぐい、いいんだ
こういうひには
目をしばたけば
肩がゆっくりあがりさがり
立ち去る獣の後姿、
その頭にかわいらしく
白い手ぬぐいをかぶっている
雨が降る前に
てぬぐい、ほしかった
ぼうっとしていて、
は、と気づく
洗濯物、いれなきゃね……
雨が降る前に
縫いかけのてぬぐいと針
裁縫箱しまって
たとたと二階にかけあがる
空はだいぶぐずついている
雨音に、耳かたむけて
気づきもせずに、縫っていた
かなこのかなこの、どこかで鳥が鳴いていた