花の星
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小説
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2012
> なんでもない
なんでもない
あたたかな日溜まりのなか
白くながい蛇がひとついて
草間に空いたところから
うっとりと空をあおいでいた
青くすみとおった空には
やわらかくうすい雲がながれ
よくみると
夜に遅れた星がひかっている
おさないころ
おさないころ
もう覚えていない
おさないころ
へびはちろっとしたをだして
ゆっくりはいすすむ
あかく濃い花椿の下
しろくたくさんの梅花のした
はなのかおり
甘くおだやかに
木々ごとにいれかわり
蛇のころもをなでていく
おちていた花びらを
すこしなやんで
あたまにのせてみる
わずかな金色に
かれかけた花びら
葉と葉のあいまに
ひかりひかり
おひさまのひかりが
きらめく
ぎんもくせいの
温かでおだやかな花の下
ようやく決めて
まるで乳飲み子のように
へびはうずくまる
温かな薫りにつつまれる
おさないころ
おさないころ
もう覚えていない
おさないころ
目をとじると
くらいなかに
あかや白の模様が
うねうねうかぶ
おさないころ
おさないころ
母様、ととさま
おさないころ
土が、重くたわんだ蛇のからだを
沈むようにしずかに
支えてくれる
へびは土に
母様と
かすかに、ねごとか
つぶやく
Series :
短編
Tag:
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2012-03-19
15:33:36
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白くながい蛇がひとついて
草間に空いたところから
うっとりと空をあおいでいた
青くすみとおった空には
やわらかくうすい雲がながれ
よくみると
夜に遅れた星がひかっている
おさないころ
おさないころ
もう覚えていない
おさないころ
へびはちろっとしたをだして
ゆっくりはいすすむ
あかく濃い花椿の下
しろくたくさんの梅花のした
はなのかおり
甘くおだやかに
木々ごとにいれかわり
蛇のころもをなでていく
おちていた花びらを
すこしなやんで
あたまにのせてみる
わずかな金色に
かれかけた花びら
葉と葉のあいまに
ひかりひかり
おひさまのひかりが
きらめく
ぎんもくせいの
温かでおだやかな花の下
ようやく決めて
まるで乳飲み子のように
へびはうずくまる
温かな薫りにつつまれる
おさないころ
おさないころ
もう覚えていない
おさないころ
目をとじると
くらいなかに
あかや白の模様が
うねうねうかぶ
おさないころ
おさないころ
母様、ととさま
おさないころ
土が、重くたわんだ蛇のからだを
沈むようにしずかに
支えてくれる
へびは土に
母様と
かすかに、ねごとか
つぶやく