花の星
>>
小説
>
2016
> 雨
雨
外はあめがふっていて
少し寒い
庭のアジサイが
花のまま
枯れていた
花のまま、
腐り落ちる
花のまま
枯れておちる
ゆかなぎは
花が好きだ
「ただいまもどりました」
玄関をあけていえば
おかえり、と
とてとて
とりさんが歩いてくる
ながらくの留守にしていて
家に戻ってきた
:
「勝手しったるところなのに
近所のお店とか
なにもかも変わっていて
ああ、わたし、
いなかったんだなぁ、って」
そう、と
とりさんはいう
さいきん、コーヒー豆を
豆から粉にして
淹れることにこってるんです
灰汁の味と
コーヒーのあじが
ちがうことを
はじめてしりました
たまに。
テキトーな量販店の
テキトーなコーヒー
灰汁の味ばかりで
けんこうにいいから
ぐーっと
のんでしまいますけど
そう
ゆかなぎと
まるで話にならないことを言う
じぶんがいままで
苦手としていたのが
灰汁の味だったんだって
おどろいた
:
めが悪いときがあるんです
めが悪いと
なにもかけない
ゆがんでしまって
これじゃない、って
こうじゃないって
むきになって
やるほど
見る目が。わるいから
できないんですよ
それで、つかれて
やすみこむ
ああ、あるある
おもしろいもので
コーヒーもね
そんな時にいれると
灰汁ばかりでます
:
家に帰れないあいだ
家を出たら
帰れなくなった
猫の話を思い出した
:
とりさんをソファのようにしながら
ゆかなぎは鞄から
買ってきたお土産をとりだす
綺麗でしょ
文字はわかりません
あちらの絵本で
いちばん、きれいなの
かってきました
とりさんは少し笑う
ゆかなぎが帰って来てほっとした
わたしも
家について
ほっとしました
:
そとの雨は音をかえて
また深く降り始める
大雨になりそうだ
布団にはいり
電気をけすと
実家のにおいがして
ゆかなぎは
2、3回
息を大きくすってはいた
Series :
みえないもの
Tag:
ゆかなぎととりさん
... 前頁「軽蔑さん」へ
... 次頁「幸せ」へ
2016-09-15
05:03:26
花の星
>>
小説
>
2016
> 雨
Copyright © by mogiha(
https://ahito.com/
) All Rights Reserved.
少し寒い
庭のアジサイが
花のまま
枯れていた
花のまま、
腐り落ちる
花のまま
枯れておちる
ゆかなぎは
花が好きだ
「ただいまもどりました」
玄関をあけていえば
おかえり、と
とてとて
とりさんが歩いてくる
ながらくの留守にしていて
家に戻ってきた
:
「勝手しったるところなのに
近所のお店とか
なにもかも変わっていて
ああ、わたし、
いなかったんだなぁ、って」
そう、と
とりさんはいう
さいきん、コーヒー豆を
豆から粉にして
淹れることにこってるんです
灰汁の味と
コーヒーのあじが
ちがうことを
はじめてしりました
たまに。
テキトーな量販店の
テキトーなコーヒー
灰汁の味ばかりで
けんこうにいいから
ぐーっと
のんでしまいますけど
そう
ゆかなぎと
まるで話にならないことを言う
じぶんがいままで
苦手としていたのが
灰汁の味だったんだって
おどろいた
:
めが悪いときがあるんです
めが悪いと
なにもかけない
ゆがんでしまって
これじゃない、って
こうじゃないって
むきになって
やるほど
見る目が。わるいから
できないんですよ
それで、つかれて
やすみこむ
ああ、あるある
おもしろいもので
コーヒーもね
そんな時にいれると
灰汁ばかりでます
:
家に帰れないあいだ
家を出たら
帰れなくなった
猫の話を思い出した
:
とりさんをソファのようにしながら
ゆかなぎは鞄から
買ってきたお土産をとりだす
綺麗でしょ
文字はわかりません
あちらの絵本で
いちばん、きれいなの
かってきました
とりさんは少し笑う
ゆかなぎが帰って来てほっとした
わたしも
家について
ほっとしました
:
そとの雨は音をかえて
また深く降り始める
大雨になりそうだ
布団にはいり
電気をけすと
実家のにおいがして
ゆかなぎは
2、3回
息を大きくすってはいた