雨音

夜とともに
ふりはじめた雨は
ただひたすらにふりつづけ
コンクリートでおおわれた道を
水にぬらしている

くぼんでいるのか
道のまんなかに
水がたまり
わずかに
流れている

そのうえを
ましろい毛をした
犬よりすこし
大きいぐらいの
オレンジ色の耳をした獣が
はんむ、はんむと
あるいていた


こまやかな雨水が
獣にあたっては
白毛にからまるように
つるつると
すべりおちる

金色の目は
ひとつ、はんぶんになり
ひとつ、ぴかぴかと
ひかりかがやいている

雨水のなか
やわらかな白い花や
かれた椿や
薔薇のはなびらが
おちて、くさっている
それをふんふんとかいで
はなさきを水にひたしながら
かれはひとつ、ふたつをたべる

そこに
ちいさな舟がすうっとはいってきて
けものの足さきにとまり
また、ねずみほどの
ちいさなおじさんが
しろくきらきらとした介で
白毛のけものをさし
おまえ、どうした、
と、聞く

おじさんのあたまには
子供がたわむれで
つくりあげたような
わらぼうしが
かぶさっている

服はかんたんな着物のようで
白地に細かい金模様が
とうかんかくに並んでいる

雨雲でおおわれた空には
ひとつの星もなく
暗闇から
雨はふりおち
外灯のあかりに
ひかひかとひかり
まるで細長いむしのように
消えていく

やわやわと
音が流れる

雨水のながれる
うえのほうから
しろい花が
いくつも、いくつも
ながれてくる

まんなかが金色で
うすい花びらは
それぞれがしんなりと重く
水滴をたくさんつけ
かさなりながら
さきへ
さきへと
ながれていく

うきたつような花のなか
おじさんが
こまったように
胸元からキセルをだし
火をつけてすいはじめる

白毛のけものは
なんにも気にせず
もむもむと
花びらやはなを噛み
のみこんでいく

さあさあと流れる
雨音に混じり
だれかの歌声が
かすかにきこえる



2012-05-13 00:02:06