虹の川

彼女は柔らかな空をみていた

ちいさな鳥がなんびきもつらなり、飛んでいた。
かなしいこえがぱーお
ぱーおと響いていた



暗がりの小さな水辺
あたたかい炎が
燃えている
オレンジ色のひかりが
ゆらゆらゆれていた

めをさますと
その人は目を覚ました私に
気がついたようで
池の魚をほうってよこした

おう、うまいぞ

それしか、いわなかった

その魚はむっちりと肉がこえて
かぶりついたら
確かにおいしかった
もぐもぐと口にしながら
ふと、涙が
ふたつ、ひとつ、ふたつ
ひとつ
ぽたぽたぽたぽた
流れて
ほほがぬくもる

そうしたら
その人は、ふは、ふはと
笑うのだった

「どうした
 ほねでもささったか」

わたしは首を振って
なみだとあわせて
のみこむように
魚の肉をもむもむたべた

しおあじがきいて
ちょうどいいの

そういったら
笑われた

どうしていいか
わからないことばかり
増えて

自分が悪いのか
なにが悪いのか
解らないことばかり
気がついたら
増えて
ただ苦しくて
苦しくて
苦しくて

ああ にがいな、と思う

そう いきることに
焦ると 焦げて
焦げたら苦くて
苦みは 涙しか
消えないの

そう 笑ったら
彼は月をみて
振り返りもせずに
また釣り糸を
いけにたらしていた
その背中が
広く、おだやかだった

詩なんて なんて滑稽なだろう

そう いったら
彼は、ふりかえって
「もう一つ つれたよ」

ぎんの玉を
放ってくれた
私はそれを受け取って
手鞠にした

月は金色
手鞠は銀色

あ、雨だ
霧雨がたくたくたくたく
あたたかい
なまぬるい
ただ 優しい
おだやかな
静かな 霧雨がふった

あ、虹だ

彼が言うから
うそ、といいながら見上げたら
空は晴れていた
あまぐもは静かで
雨の中からたくさんの星が見えた
白い、天の川
月がひかり ひかり

その前に 少し薄く
虹が見えた
2012-07-24 10:00:00