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詩
> 地蔵
石になった地蔵が
草の生えた丘に
小さく転がっていた
石になった地蔵は
少しだけ微笑んで
悲しそうで
固まっていた
小さな稚児がきて
走ってきて
草に混じって
転び、泥になった
稚児はひとしきり泣いて
泣いて
手の平に
赤い赤い血が滲み
稚児はもういっぺんだけ泣こうと
口、開けて
地蔵に気づいた
石になった地蔵の
おかんむりを
熱い手の平でそっと包んだ
冷えた石
手の平の熱さが
すっと染みた
すっと染みて
あったまった
稚児は手の平をなめて
またもういっぺん走り出す
地蔵はそれを見ながら
微笑んでいる
あったまった石は
地蔵になる
(シリーズ:
イド
)
2005-07-09
00:00:00
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草の生えた丘に
小さく転がっていた
石になった地蔵は
少しだけ微笑んで
悲しそうで
固まっていた
小さな稚児がきて
走ってきて
草に混じって
転び、泥になった
稚児はひとしきり泣いて
泣いて
手の平に
赤い赤い血が滲み
稚児はもういっぺんだけ泣こうと
口、開けて
地蔵に気づいた
石になった地蔵の
おかんむりを
熱い手の平でそっと包んだ
冷えた石
手の平の熱さが
すっと染みた
すっと染みて
あったまった
稚児は手の平をなめて
またもういっぺん走り出す
地蔵はそれを見ながら
微笑んでいる
あったまった石は
地蔵になる