トラップ

道を歩いていると
獣の女と獣の男がいる
かれらの
爪はびかりびかり光る金色で
わずかに血がこびりついている

自らのないものが
空虚に藁をつかむ
藁をつかんで
溺れて沈む

あのかたは
あのかたがたは
あの方方の名をつかい
だますものが
嫌いすぎるのです

そういいながら
胸の奥をあけてみせる

それは鳥かごのようになっていた
銀色のとげがたくさんついている
水晶や、ダイヤモンド、黄金と見えるものが
鋭利に尖り、あちらこちらに
たくさん散らばっている
トゲが乱立するゆかに、
ぼうっとした顔をした
奇妙なひとたちが
化粧を濃くして
しかし、はだかのまま
座り込んでいる

だますものが
嫌いすぎるのです
あの方方は
嫌いすぎるのです
ですから

かれは
胸の扉をしめた

ヤマイ、なのです
すべて
しかし
あの方方の
嫌悪は深く
憎悪は深く

とたんに
女と男はさけびはじめた

ぎゃああああ
ゆるして
ゆるして
ゆるして
ぎゃああああ
ぎゃああああ

女がわらう

わたしのなは
コドクといいます
かれらの真実です

おとこがわらう

おれのなは
……といいます
かれらの真実です

ぎゃああああ
ぎゃああああ
またふたりしてさけびはじめる
おんなのほうが
ぴたりと叫びやめる

ふしぎでしょう?
このなかのことが
きこえないよう
わたしたちは
さけぶのです

わたしたちの
ないぞうのくだが
かれらのからだにつきささり
かれらの命脈をすいつくし
すいつくし、滅する

かれらは叫びませんよ
舌をちぎられ
手足の神経をきられ
あばれもしません
しかし、音がしますから
こうして悲鳴をあげて
けしているんです

ばらばらと
おんなのほうから
涙がこぼれる

なぜ、と

ばらばらと
おとこのほうから
涙がこぼれる

なぜ、と

かれらのうしろから
ひどく首をふりつづける
なにかがくる
ながい、長いまっぐろい髪の毛が
はげしい、その首のふりにあわせて
ぶん、ぶうん、と
ながれてゆれる
四つ足の獣かと見えば
白と黒の紋様をもった
赤色の角を生やしたものだ
かれが首をふるたび
なにかが砕けちる

血だ

ぐ、と
それが、わたしを見る
その目は赤く濁り
ただギラギラと光っている
口にたくさんの牙がはえ
血まじりのよだれを
だらだら地に流しおとしている

「わるいものには
これら、よい臭いで
すばらしく美しく見える」

「これらのないぞうのくだ
黄金やダイヤモンドにみえる」

「ひかれてひかれて
ひかれてひかれて」

「とくべつにみえ
とくべつなものにみえ」

「わるいものが
そうして、わらいながら
これらの胸に
はいり、とらわれだら
わだずが でで、ぐらう」

しがじ

「ぐっでもぐっでも
減らないね」

それが、ぽつりと、いった
2016-08-29 20:56:40