それがひとのいいところ

杖をつかれたものが
えっちらおっちらと
崖を越えてくる
それを見ながら
お茶を飲んでいた

茶屋についたとたん
かれは背のびをして
うんうん、あん。とうなった
それから、やあ、つかれたね、という

ギョウシャだという
腰に蛇がまきついている
レイノウという
レイノウというのは
多くいすぎて
なにがなにやらわからないが
へびさんは
いまは、偽物はすくない、という
まものが深く強いから

レイノウは
いつも、まものに狙われている
師匠が良いものだと
まず、まっさきにならうのは
自分の身の守り方だという
それぞれ、力がちがうから
それぞれで、守り方も
やらなきゃならない
しゅぎょう、しゅぎょう、
しゅぎょうばかりの
世界なんだと

あかと、しろと、あおの
団子をかって
塩をかけてもらい、食べる
ギョウシャさんも、おなじような
団子としるこを頼んでいた

うそつきや、よわいものは
すぐに、魔物にかられる
とりさんがいう
まえ、金色の蜘蛛観音さまを
みましたよ、と
つたえたら
「それでも観音」が
ついているなら
全然まし、という
救いたい気持ちがあるなら
全然まし

空はたかく、風うっている
わたしには
かの世界はなによりも
過酷におもえる
神の指先とかし
神のつたえとおり
しゅぎょう、しゅぎょう、
しゅぎょう、しゅぎょう……

あはは、と
ギョウシャがわらう
子供のように

道がちがうようですが
あなたの、幸福を
こころより、お祈りもうしあげます
そうして、また
山のような崖のような道に
あしをかける
すこし、泣かれていたようにみえた

どのみちも険しいね
そう、いえば
へびさんは笑う
本人次第だよ

あら、あのひと
へびさんをおいていった