まさかと思いなさる
まさかと思いなさるが
神々もひとを憎まれる……

見えないから
わかることも
ありますか

見えていたら
見失うことも
あるんでしょうか……

……

ひとりの鬼がきて
わたしが寝ていて動けないのを見守りながら
ひとのパソコンをたちあげる
ウィイン、カチ、カチ
音がする

鬼はひとつひとつなにかをみてから
私をもう一度確認するようにみつめて
それからまた
パソコンを動かす

ヌイイヌイイ


そうすると
パソコンの裏から
おとずれたのか
私からは見えないさきで

奇妙な声を出す
もうひとつの
鳥かなにかが
話し出す

これは
腐った目、四つもってる
死んだものの目
ふたつ、つけたのだろ

……呪いかけるものも
祈りかけるものも
ねがいかなえるなら
つかわれらぁな

……

つかえるから
心の臓とまらせんように
されとるな

そうして鬼がぐっぐっと笑う……

これは
たま食い
よぅ、たま食うとる……

われらが
端々まで動けんと
好き勝手にしよる

いまはこうゆうものがある
わかりやすぅて、ええな

ぐっぐっと笑い声

しばらくカチ、カチ、というおと
ぎい、と
椅子がきしむ音

ーーいた、いた

鳥かなにかが嬉しそうにはなす

それから
鬼がパソコンから立ち上がったらしい
わたしのところにきて
そっと顔をのぞきこんで
頭のところに手をおいた

暗がりは……にせものと
ほんものと
腐りものと
くるいものと
まがいものが
いりまじっている
なんぞ
わからんでもえぇ……

わたしはとあるテレビを思い出す
《夏にはー
こういう
いわをー
ひっくりかえすとー
暑さからのがれた虫が
にげこんでいまーす》
大きな石がひっくりかえる
あわてたように
虫虫がはいでて
にげつくばる

……

おかげで
おっていたやつをみつけた
あとでお礼をするから
いまは
見ないふりをしてくれ……

そうして目を閉じて
またひらくと
赤い花が隣にあった……
2017-04-21 21:47:22