いつくしみ

とにかくわたしは必死でした
紅い花、金の花、白い花をつんでは
鳥や獣に差しあげました
そこにはたくさんの獣が居ました
たくさんの鳥もいました

 鳥は鳴いておりました
 獣はつむいでおりました
 花はえがいておりました

 いのちを

ふと気がつくと
大空におおきなおおきな龍が居ました
銀色の龍でした
それがふう
ふう、とないでいるのですが
そのあまった風で、
やなぎや、そういった木々が
ふふう、ふふう、と
楽しげに遊んでいるのです
――やなぎはとくに風がすきです
たのしげにきゃあきゃあと
あそんでいます――

龍は大きすぎて
あるいてもあるいても
空の景色は変わらないのです
青の中、彼のうろこがうすまって
雲に見えるのです

夏の日がさかりますと
雲の代わり、そらをとんでる龍にであいます
かれらはいつも
たのしげに風をあまらせて
ゆっくりゆっくり、空の大流を
たのしんでいます

 うたうものは
 うたのなかに

 えがくものは
 えがくなかに

 つむぐものは
 つむぐなかに

 神をみつけます

 そろそろ
 気がついても
 いいのではないでしょうか

 大きな聖霊の下
 わたしたちは

 ただ ひたすら

 混流激流の中で
 愛をさけぶために
 うまれました

私の手の中の花は
龍のかぜにふかれて
ひらひらひかりました

 しかし こんなこと
 たいしたことではないのです
 よくあることです
 ふつうのことです
 わたしにも あなたにも
 誰でも そう
 わかっていたことです

 きがついていたことです

じっと見ていますと
その龍は
わたしをついっとみて
またついっと目をそらしました

 かれらは、
 ことばをもって
 はなしかけてはくださいません

 ただ 愛深い目と
 自由なこころをもって
 わたしたちの命と
 その命の中にいれた
 光の呼吸を

 いつくしみ
 喜ばれているだけです
2011-07-08 10:22:12