子鬼

秋がすぎさり
冬が来まして
わたしは木の実をひろいながら
今日は栗ご飯にしよう、と思いつつも
栗がない 何故って冬ですから、栗はもうないのですが
とにかく 栗ご飯にしようと思います

ひとりごとをいいながら
歩いておりましたが
なかなか良い山のようで
歩きやすくはないけれど
たくさんのおいしい実がありました


―― きょうは
おなかがいっぱいになりますね
ご飯 おいしくなりますね

そういっても誰も居なくて
ああ、そういえば
私は そうだった
ひとりだったんだ と
気がついたんです

ふ、と
景色が元に戻り
どこか、違うところに
いたと思えたのに
やはり 私は一人で
赤い実をたくさん拾っていた
今日は、ご飯がおいしいだろうけれど
ひとりだら
さびしい そう 思った。



―― 
見上げたら子鬼が独り居て
ちいさな茶色い角に
ちいさな唇で
その赤い実をおくれよ、と いう

自分で拾いなさいよ、そういえば
わらいながら 拾えないという
まるで、泣き叫ぶような笑顔だった

誰かに、腕を切り落とされたらしい
だから、
ひろってあげた

ありがたそうにそれをうけとり
それでもふてぶてしく
ちょっとあちらに身をよじりながら
御礼をしたいというから
では、私を見ていてください と 頼んだ

視線は干渉 わすれていたのですが つまり関わるということは
けっして 制御できない
支配も のぞみも とおせない
願望を持てない わたしでないものを前に

私の目でみて こころを渡す ことのようです
2011-12-13 15:06:59